送迎の空き時間、10年ぶりの暖簾の向こう側
今の私も昔の私も、根底にある情熱は何も変わっていません。ただ、それを普段は周囲に一切見せていないだけ。これは、私が「ステルスパパ」として覚醒する少し前の、前日譚(ぜんじつたん)です。
つい先日も、衝動に突き動かされる出来事がありました。 それは、娘の習い事の送迎でできた空き時間のこと。自宅から車で小一時間ほど走らせた見知らぬ土地。知り合いに会うこともないという謎の解放感に包まれながら周辺を散策していたところ、あるチェーン店の本屋を見つけました。
実は少し前から、昔コンビニ版で読んだ「冨樫義弘先生のレベルE」が無性に読みたくなって探していたのです。しかし店内を見回しても、残念ながらお目当ての本は見つかりません。
何気なくレンタルビデオコーナーへ足を向けました。最新作の『ミッション:インポッシブル』の特集や、ジブリ作品のコーナーを本当に何気なく眺めていた時、たまたま、あの「大人のコーナー」の暖簾が目に入ってきたのです。
本当に10年ぶりくらいに、その境界線を踏み越えました。 入った瞬間、胸の奥からワクワクが溢れてくるのを感じました。今のトレンドを掴もうとパッケージを一通り見回している時には、私の脳内は完全に、かつて足繁く通っていたあの高校生当時の「戦闘モード」へと切り替わっていました。
予算1950円の厳選。500択から勝ち残った精鋭たち
「よし、借りよう」 そう思ったものの、ここは自宅から小一時間かかる場所。返しに来る手間を考え、一度は「今日は見るだけにしよう」と諦めかけました。しかし、諦めきれずに店内をさらに一周すると、一番奥でレンタル品とは違う並べ方をされた棚に行き当たりました。
プラスチックの編みかごに、タッパー付きのビニール袋。中にはDVDとパッケージの表紙だけが同封された中古品が、売り物として何百枚も並べられていたのです。 「これだ!」
レンタルがダメなら、ここで購入すればいい。そこからは、500作品はあるであろう棚から、1枚1枚「自分が本当に見たいもの」を片っ端から漁る隠密ミッションが始まりました。
値段は5枚で1700円、10枚で3000円。私のお小遣い(1万円)の範囲内で考えると、5枚セットあたりが現実的な限界です。熱い眼差しで厳選を重ね、最初にピックアップしたのは11作品。これでは予算オーバーです。そこからさらに苦渋の決断で削ぎ落とし、最終的に6作品に絞り込みました。合計1950円。最高のコストパフォーマンスです。
スペアタイヤの奥から、CDケースへの偽装工作
DVD選びに夢中になり、気づけば娘を迎えに行く時間が迫っていました。迅速に会計を済ませ、車に乗り込みます。もし買ったものを娘に見られでもしたら、帰りの車内はとんでもない空気になります。私は素早くハッチバックを開け、床下収納のスペアタイヤの奥深くへ、戦利品を静かに忍ばせました。
無事に帰宅し、隙を見て自宅への運び込みには成功したものの、次の課題は「どこに保管するか」です。一瞬のひらめきで思いついたのが、学生時代に買ったCDをコレクションしていたファスナー付きのCDケース。その中にDVDを紛れ込ませる作戦です。全てのディスクを収納し、パッケージの表紙は他のゴミと一緒に即座にゴミステーションへ廃棄しました。
あとは、あの高校生の時に飯島愛のビデオテープを観るためにチャンスを待ち続けたのと同じように、完璧なタイミングを待つだけです。 我が家でDVDを再生するには、リビングの大型テレビを使うしかありません。つまり、家族が一人もいない瞬間でなければリスクが高すぎるのです。自分の家庭を持った今でも、実家の頃と全く変わらないこの限界状況。ですが、私には長年培った経験があります。完全に「慣れて」いるのです。
ついに訪れたその日、満を持してDVDをデッキに挿入しました。期待度の高い順に再生した結果、リピート確定が2作品、1回は楽しめたのが2作品、そして無反応(エラー)だったのが2作品。
トータルで見れば、レンタルするよりも遥かにコスパの良い買い物でした。ただ、いつまでもCDケースに忍ばせておくのはリスクが高いため、しばらくして全て処分しました。 しかし、あの「リピート確定」の2作品には、またいつか、どこかで出会いたいものです。

