mixiの足跡から始まった恋。運命を分けた、ホテルでの「何もなかった夜」

今の妻に出会う前、ネットのサイトを通じて出会った一人の女性との話をしようと思います。

きっかけは、当時全盛期だった「mixi」というコミュニティサイトでした。彼女が私のページに足跡を残してくれたのを機にメッセージをもらい、「音楽のライブが好き」という共通の趣味で意気投合しました。

メッセージから電話へ、そして初めて会う日

mixi上でのやり取りは携帯メールへ、そして「一度話してみませんか」という電話へと発展していきました。対面より電話の方が素直に話せるタイプだった私にとって、この自然な流れは心地よいものでした。

初めて会った日はファミレスで食事をし、音楽の話で大いに盛り上がりました。その席で、近いうちに開催される音楽フェスに一緒に行こうという話が決まったのです。

フェスの夜、ホテルの部屋で

デートを重ねてライブ当日を迎え、その夜は会場近くのホテルへ泊まる計画になっていました。内心緊張していましたが、いざ部屋に着くと、不思議なくらい冷静になってしまい、そういう空気にはなりませんでした。

お湯を貯めてくれている彼女の背中を見ながら交わした何気ない会話に、どこか「大人の女性」としての余裕を感じたのを今でもよく覚えています。

その夜、彼女が布団から手をすっと伸ばし、「手、繋いで」と言いました。私は素直にその手を握りましたが、それ以上のことは何も起きないまま、朝を迎えました。

駅のホームでの、思いがけない涙

翌朝は一緒に朝食を食べ、電車で最寄り駅まで帰りました。別れ際、事前に用意していた誕生日プレゼント(紅茶の詰め合わせ)を渡すと、彼女はその場で大粒の涙を流し、「こんな風にしてもらったこと、今までなかった」と言ってくれました。

後日この話を女友達にしたところ、「それは酷なことをしたよ」と怒られてしまいました。「何もなかった翌朝にそんなプレゼントを渡すのは、気を持たせるだけで残酷だよ」と。言われてみれば、その通りだったのかもしれません。

数ヶ月後の電話、そして今の妻へ

その後も彼女とは何度か食事をする機会がありましたが、それ以上の関係に発展することはなく、自然と連絡も減っていきました。

数ヶ月後、彼女から久しぶりに電話がありました。その頃、私には人生で初めての彼女ができていました。それが、今の妻です。

「久しぶり、元気にしてる?」「うん、元気だよ」

短いやり取りの後、彼女は「そっか」とだけ答え、静かに電話を切りました。それ以降、連絡が来ることはありませんでした。

あの夜、何も起きなかったこと。もしあの時、違う選択をしていたら、今の家族に出会うこともなかったかもしれません。20代の頃の、不器用だった自分を思い出すと、今でも少し懐かしい気持ちになります。