モラトリアムの終わりに、突然舞い降りたときめき
散々ブログで「童貞ネタ」を擦ってきましたが、そんな私が初めて女性とお近づきになった話を今回はお届けします。
とにかく彼女が欲しかった大学時代。しかし願望を募らせているだけの日々を過ごし、気づけばもう四年生。卒業単位もすっかり取りきって、数ヶ月後には社会人になろうとしていた頃のお話です。
当時はまだ「出会い系サイト」と呼ばれていた場所で、私は一歩を踏み出す決意をしました。写真は無く、年齢もわからない、メッセージのやり取りだけでお互いを探っていくスタイルのサイトでした。
何十件もメッセージを送り、返信があればやり取りを続ける。そんなことをひたすら数週間続けた結果、一人の女性と個人アドレスの交換にまで漕ぎ着けることができました。
それからの私は、毎日毎日、彼女とメールをしていました。 「今、こっちでかみなりが鳴ったよ。こわい」 「今度プール行こうね。水着一緒に選ぼう」
大学ですることがなく、食堂で友人とトランプの大富豪をして何時間も時間を潰していた私の冴えない日々に、突然、ときめき輝く事態が舞い降りてきたのです。友達と遊んでいても頻繁にメールが鳴り、「携帯鳴りすぎ、誰だよ」と煙たがられる程、私の日常は彼女一色に染まっていきました。
「写真見せて」と言われ、容姿に自信がないながらも、最大限に自分を良く見せる角度とカメラの距離感で自撮りをして送信。ついに「会いたい」と、約束を取り付けるところまで行ったのです。
カラオケのミスチルと、ピッタリ寄り添う肩
約束の当日、私は電車に乗って2つ離れた駅へ向かいました。駅のロータリーで待っていると、彼女は車で迎えに来てくれました。
「こんにちは、乗って乗って」 促されるまま助手席に座ると、「年下ってはじめて」の一言。私は(もう付き合ってるの?)と動揺しつつも、不思議とそこまで緊張はしていませんでした。
車で10分ほど走り、カラオケ店へ。案内された広めの部屋で、最初はそこそこの距離感で着席しました。 「先に歌うね」と彼女がかわいらしい声で歌ったのは西野カナ。次にマイクを渡された私は、急いでデンモクを検索し、ミスチルの『掌』を入れました。初対面で歌うには少し重い曲ですが、勢いで歌いきりました。サビの高音できつくなっていると、「頑張って、いいよ」と彼女が声をかけてくれます。
曲が終わる頃には、あれだけ離れていたはずの彼女が、私のすぐ横にピッタリと肩を寄せて座っていました。
(なんだかすごく好感を持たれてるっぽいな)
そう妙に冷静に分析した私は、それ以上の接近をしないままカラオケ屋を後にしました。その後、昼食を食べてゲームセンターでプリクラを撮影。(まるで付き合ってるみたいだ!)と思いつつも、何か自分の中で決定的に盛り上がるものがありませんでした。夕方になり、そろそろ帰ることを伝えると、「もう帰っちゃうの?」と彼女。
しかし、私は自分の気持ちに従って、そのまま帰ることにしたのです。
携帯の奥から聞こえた泣き声、そして「選択」のルーツ
家について、撮影したプリクラを眺めていた時、ふとゲームセンターですれ違ったカップルの視線を思いましました。その二人が、私たちを見て笑っていたように思えてしまったのです。急に彼女と一緒にいることが嫌になり、(もう会うのはやめよう)と思い始めたタイミングで、彼女からメールが届きました。
「今日はありがとう。付き合いたいと思ってるけど、いいかな?」
私の返事は「ごめん」の一言でした。 すぐに彼女から着信があり、「なんで?」と聞かれましたが、明確には答えられませんでした。今思い返してもはっきりした理由はわかりません。童貞がただ日和っただけなのかもしれません。会話の最後、携帯の奥から彼女の泣き声が聞こえ、電話を切りました。
ほろ苦く、そして申し訳なさの残る、私の人生初のデートの結末です。
あの頃の私は、他人の目線(周囲の評価)を過剰に気にしてしまい、せっかく目の前にあった「リアルな関係性」から逃げ出してしまいました。ロジックではなく、一瞬の感情の揺らぎでチャンスを不意にしてしまった苦い経験です。
しかし、そんな「日和ってしまった不器用な過去」があるからこそ、現在の私は、何事に対しても事前にシミュレーションを重ね、他人の目線に惑わされずに「自分の大切なもの(家族や自分の時間)」を確実に守るための合理的な判断力を身につけることができたのだと思います。
今、深夜の静かなPC環境で、完全に自分をコントロール下に置いてブログを書いている時間。あの頃のように他人の視線でブレることのない「強固な自分だけの聖域」を構築できているのは、大学最後のあの寂しい携帯の泣き声と、大富豪をしていた冴えない日々の記憶が、どこかで私を支えてくれているからなのかもしれません。
